1908年に発行された、フランツ・ヨーゼフ1世の治世60周年を記念する銀貨です。額面は5クローネ、銀品位は.900、重量24グラム、直径36ミリ。ウィーン造幣局にて製造されました。 表面には右向きのフランツ・ヨーゼフ1世の肖像が描かれ、周囲にはラテン語で「神の恩寵によるオーストリア皇帝、ボヘミア・ガリツィア・イリュリア等の王、使徒的ハンガリー王」と刻まれています。肖像の彫刻はルドルフ・マルシャルおよびルドルフ・ノイベルガーによるものです。 裏面には、栄光を象徴する女神が左へ駆ける姿が描かれ、手にはオリーブの枝を持ちます。左側には王冠付きの額面表示「5 COR」、右側には二重帝国を象徴する双頭の鷲が配置されています。周囲の銘文「DVODECIM LVSTRIS 1848 1908 GLORIOSE PERACTIS」は「12のルストラ（5年周期）を栄光のうちに終えた」という意味で、即位60周年を讃えています。彫刻はシュテファン・シュヴァルツによるものです。 コインの縁には「VIRIBVS VNITIS（力を合わせて）」のモットーが刻まれています。これはフランツ・ヨーゼフ1世の治世を象徴する言葉でもあります。 発行当時は流通記念貨として使用されましたが、現在はすでに法定通貨としては廃止されています。その重厚なデザインと象徴的なモチーフから、オーストリア帝国末期の美術性を今に伝える名品として高く評価されています。